59の認定品が伝える、
伝統の味、本物の味。
昔ながらの足踏みと手延べから
生まれる最高級めん。
岡山県浅口市鴨方町
古くから、岡山県浅口市鴨方町と周辺部では、手延べ素麺がつくられ「鴨方手延べ素麺」と、広く親しまれていました。現在は、当地の小麦生産量が減少し、北海道産小麦を使っています。
「鴨方手延べ素麺」の特色は、しっかりしたコシ・歯切れのよさ・なめらかさであり、これらはこだわりの原料と足踏みと手延べの伝統製法によって生み出されています。
現在、原料の小麦は当地では栽培されておらず、「鴨方手延べ素麺」には麺の延びやコシにかかわる良質たんぱく(グルテン)にすぐれた北海道産小麦を使用しています。塩は地元岡山のミネラル豊富な天然塩。水は素材の味が引きたつ活性処理水を利用しています。製造は、冬場のみ。小麦粉に食塩水を混ぜて足で踏んで大きな円にすることから始まります。この生地を、約15cm幅の渦巻き状に切りこんで太い棒のようにしたあと、熟成を見極めては引き延ばしを繰り返し、直径1mmほどの細い素麺に仕上げていくのです。
とくに最終段階で行われる2本の木箸で麺をさばいて延ばす門干(かどほ)しの工程では「麺と対話しながら、気持ちよく麺に延びてもらう」と、より美味しい素麺ができあがるとか。1本の生地を製造工程の中で麺を熟成させながら細くしていくので、伝統製法ならではの引き延ばしによる食感や無添加の安心感も、大きな魅力となっています。
岡山県浅口市鴨方町は、かつての吉備の国(古代の地名)。約1000年前の平安時代末期に、当地で「麦切」と呼ばれる麺の一種がつくられており、これを朝廷に献上したと伝えられています。その後、麺づくりが発展したのは、江戸時代後期すでに麺の名産地だった播州(現在の兵庫県)から熟練の職人を呼び寄せて技術を学んだのが契機とされています。
鴨方で手延べ素麺が盛んになった理由は、素麺づくりの好条件に恵まれていたから。①稲の裏作の小麦の生育に適した温暖で少雨という気候であること。②鴨方の清らかな水が良質な小麦栽培と製麺業に適していたこと。③ミネラルたっぷりな天然塩が瀬戸内海沿岸で生産されていたためです。そのような背景から、明治時代以降は岡山県浅口市鴨方町およびその周辺は、兵庫県の播州地方・香川県の小豆島と並んで、素麺の瀬戸内3大特産地に成長。当時の麺は、手延べ方式による素麺製造だったため、地名を冠して「鴨方手延べ素麺」と呼ばれて、古くから多くの人々に親しまれてきたのです。